本当にあった怖い話

本当にあった怖い話をまとめています

存在

S県S市在住のFさんが、高校生の時に経験されたというお話です。

 あれは、私が大学受験前の勉強合宿で泊まった宿舎で起こった出来事です。

  私が当時通っていた学校では、受験前に宿舎に受験生が全員で泊まり込み、昼夜、自分たちの持ち込んだ勉強道具で、徹底的に勉強をする行事がありました。ホテルの大広間を貸し切り、先生の号令で全員一斉に勉強を始めます。もちろん、先生の終わりの号令がかかるまで、生徒どうしの私語は厳禁です。それを三日三晩繰り返します。

 皆、疲労困憊といった感じではありましたが、最終日の夜だけは『明日はバスの中で寝ればいい』と、布団の中で恋愛話や先生への不満、将来はどうするのかなどの話をして盛り上がっていました。

 そこへ先生たちの見回りがやってきます。皆、寝たフリをしてやり過ごしては、またおしゃべりに夢中になっていたのですが、ふと誰かがこんな話を始めたのです。
 「来るときバスの中でK先生が言ってたんだけど、ここって…まじ出るらしいよ?」
 「うそぉ?やめてよ」
 「え!?冗談だよね?」
先生たちの外の見回りのライトのあかりが離れていくのを確認した私たちは、頭まで被っていた布団から顔を出しました。
 「その話、うそだよね?」
 「K先生の冗談だって」
 「…そうだよね、きっと。ねぇ、怖いから先生にバレないくらいの、何か明るくなるもの持ってない?」
 「携帯のライトは?」
 「いいね」
友達が携帯を取り出し、ライトで天井を照らした次の瞬間、仰向けになって天井を見て話していた私たちの声は、悲鳴へと変わっていました。

 ライトで天井に映しだされたのは、大きな男の影だったんです。私たちの足元に誰か立っていないと、映るはずがないのですが、誰も立っていません。私たちだけでなく、他の子たちも悲鳴をあげたため、先生たちがすぐに駆けつけてくれました。何があったのか事情を話すと、携帯は没収され、『早く寝なさい、大丈夫だから。これは朝まで預かります』の一言で就寝を促されました。私たちは、正体の知れないあの影がまた見えてしまったらどうしようと、布団の中で震えながら朝を迎えることになったのですが…。

 帰りのバスの中、私たちは昨日見えたのは何だったのか、友達と静かに話をしていたちょうどその時、向かいの列に寝ていたクラスメイトが話かけてきたのです。
 「ねぇ…昨日部屋で見えたの、男の人だったよね?」
 「やっぱり見えてた?」
 「うん、男の人が私たちの布団の足元に立ってたよね?」
 「うん」
 「え!…私たち、天井に影だけ映ってるのは見えたけど、人が立ってるの見えなかったんだけど…」
 「えっ!?」

 私たちは確かにその存在を目にしていましたが、こちらの布団で寝ていた人間と向かい側で寝ていた人間の見えていた存在の不一致から、この世のものではないと確信しました。また、それ以上は誰も深く考えることはしませんでした。

 今年の勉強合宿で、また後輩の誰かが、あの存在と遭遇することになるのかもしれません。