本当にあった怖い話

本当にあった怖い話をまとめています

鳴り続ける携帯

N県S市在住のTさんが、当時の勤務先で経験されたというお話です。

 アルバイトの実績を認められ、社員登用された私は、携帯電話の営業・契約の接客で充実した時間を過ごしておりました。

 その日は天気が悪かったせいもあり、お客様の出入りも少なく、『今日はゆっくりできるかな?』と考えていた矢先、一人のお客様が店内に飛び込んでこられたんです。その様子はまるで、警察に追われてかくまってくれと助けを求めている犯罪者のようでした。他の従業員に、「接客…私がいきます、他のお客様をお願いできますか?」と伝え、そのお客様のお話を伺うことになったのですが…。

 「こ、これ、あんたんとこの携帯?」とお客様から差し出された携帯は、確かに当時うちで扱っている機種のものだったため、「はい、うちで取り扱ってるものですが?」と返事をしたとたん「きっ、気持ち悪いんだよ!この携帯!!どうにかしろよ!」と何かにおびえているように仰るんです。いったん落ち着いていただこうと思い「お客様、お話を伺わせていただきますので、こちらへ」と席へご案内させていただきました。

 お客様から詳しくお伺いしたところ、その携帯はお客様、お客様のご家族様がご契約されたものでないということで、いつお客様のご自宅に誰が置いていったものか分からないと伺いました。私は『そんなばかな』と思いながら、携帯電話の番号から契約者を調べたところ、確かにその携帯電話はお客様の契約されたものではないことが分かったのですが、『この名前…どこかで…?』と、見覚えのある名前のような気がした私は、その携帯を店舗でお預かりすることにさせていただいんです。お客様は「よろしくね!あ、あと、その携帯、電源落としても鳴り続けることがあるから、持ち主取りに来るまで奥にしまって置いたほうが良いよ!」と仰って店舗を出られたんです。『バグや不良品じゃない限り、電源を落としてるんだから、携帯が鳴るわけないのに…。』

 閉店後、同僚と書類のチェックやクレーム対応の状況確認を終え、一息ついた私は例の携帯を調べることに。「Tさん、あがらないの?」と同僚に声をかけられた私は、昼間の話を聞いてもらったのですが「ボケてるんじゃないの?」と言われ、『だよね、そんなことあるはずがない』と思った次の瞬間、その携帯に非通知で着信が入ったんです。私と同僚はびっくりしたのですが、契約者様が携帯を探されてかけてきたことを考え、すぐに電話を取りました。
 
 『こぽこぽこぽ』という音が聞こえるだけで、かけてきた方とお話をするには至りませんでした。

 翌日。契約者情報を確認し、自宅へ電話をかけてみたのですが、『おかけになった電話番号は、現在使われておりません』ということで、上司へ一報を入れ、もう一度その携帯を開いた私は、自分の目を疑いました。着信が50件。『昨日、私たちが店を出てから何があったんだろう?』と持ってこられたお客様と同じように、えもいわれぬ気味の悪さを覚えたのでした。私は念のためと思い、電池パックを外して保管しておきました。

 後日、上司の指示で契約者情報を持って『落し物』として警察に預けることになりました。警察署に事情を説明し、電池パックを入れ電源が入るかどうか一緒に確認した際、画面に現れたのは『着信50件』の文字。電池パックを外していたのにと思った私は、恐怖心でいっぱいになりましたが、携帯はその場で電池パックが外され、「では、こちらでお預かりします、ありがとうございました」と言われ、ほっとした気持ちで警察署を出ることができました。

 それから半月後。上司からあの携帯は、自宅の浴室で溺死されたご老人の物品だったそうで、娘さんがずっと探していたらしく、引き取りにこられたことが告げられました。いつどうやって、誰が持ち出したのかが分からず、警察に相談しにいってのことだったとか。同僚と一緒に安心感で満たされました。

 久々に母の声を聞こうと思い電話をかけたのですが、怖かったけど良いことがあったと報告がてらその話しをすると、そのご老人は私が物心ついた頃、同じ団地の向かいの部屋に住んでいた人だったらしく、よくかわいがってもらったと聞かされました。『だから見たことのある名前だったんだ…。』

 今思うと、私が耳にした音は…もしかしたら、ご契約者さまが水につかっていたことを知らせたかった音だったのかもしれません。