本当にあった怖い話

本当にあった怖い話をまとめています

押入れ

F県F市在住のKさんが、当時住まわれていたご自宅で経験されたというお話です。

 3人の子供に恵まれ、狭いマンションの部屋から一軒家に移り住んだ時の話です。
 荷解きを終え、自分の部屋ができたことを大喜びする子供たちの様子に、家内と喜んでいると、末娘が押入れの前で一人ぽつんと立っているので、「どうした?」と声をかけたところ、押入れを指差し「パパ、そこに男の子がいたよ?」と言うのです。「気のせいだよ、こっちへおいで」とその時は、おかしなことを言うな?と聞き流したのですが…。

 それから数日後、仕事が遅くなり夜中に帰宅した私が末娘の話を妻にそれとなく伝えてみると、昼間長女が同じ話をしていたそうで、気のせいだといい、聞き流したというのです。不動産屋からは事故物件だとかそういった類の話は、何の説明もなかったが…と、様子を見ることにしました。

 一カ月程過ぎ、そんなことがあった記憶も薄れかけてきた頃、今度は長男が男の子がいたと言い出したのですが、長女と末娘が男の子がいたと伝えてきたときとは違い、出窓の方を指差していたというのです。恐る恐る出窓のカーテンを開けて確認して見ましたが、何かがあるという訳でもなく、不安になった私は、次の休みに子供たちを連れて不動産屋に行くことにしました。

 不動産屋についた私たちは担当者を待つため、入り口そばのソファに腰をおろしていたのですが、長女が壁に貼ってあった新聞記事を指差し「お兄ちゃん!あの子!!」というので子供たちに確認したところ、電車に跳ねられ死亡した男の子だというのです。でも、その子がなぜ家に?と疑問に思った私は、不動産屋の担当者から詳しく話を聞くことにしました。

 私たちが借りた家は、その男の子の祖父母が住んでいた家であり、彼を失ったショックが大きかったご両親は遠くに移り住んでしまったらしく、祖父母の家であるあの家に彼は戻ってきたのではないか?という考えに至ったのでした。小さな子供を連れた私たちに、『危ないから気を付けて』と教えてくれていたのかもしれません。家に帰り、皆で『ありがとう』と手を合わせてから、子供たちは彼に会うことはなくなったようでした。

 転勤で、あの家を出る前にもう一度手を合わせて家を出たのですが、新しい家に向かう車中、妻の様子がおかしいことに気付き、何があったのか話を聞くと「私…見ちゃった」というのです。身体が冷たくなり、涙目になっている妻の様子はただ事ではない気がした私は、車を停め詳しく聞いてみると、

「その子が出窓の方を指差していたって、言っていたでしょ?出窓から隣のおうちの中、見えてたんだけど…男の人が天井からぶら下がってて…」

 彼が私たちに本当に知らせたかったのは…そちらの方だったのかもしれません。